『おしい刑事』のおしい魅力をネタバレ解説!風間俊介主演ドラマの原作小説

更新:2021.12.7

類まれな推理力で事件解決に迫りながら、あと一歩のところで手柄を逃してしまう……そんな「惜しい」刑事、押井敬史巡査長の活躍を描いた本作。風間俊介主演でドラマ化もされました。原作となっている本作のあらすじと魅力をご紹介していきます。ネタバレも含みますので、未読の方はご注意ください。

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『おしい刑事』が面白い!ドラマ化決定!【あらすじ】

M県宇都橋警察署に勤める主人公・押井敬史(おしい たかふみ)は、推理力抜群の巡査長。いつもあと一歩のところまで事件を解決に導くのに、最後に手柄を逃してしまいます。そんな彼を周囲の人が呼ぶとき、どうしてもアクセントが「惜しい」刑事に聞こえてしまうのでした。

不本意な呼び名に憤慨し、汚名返上とばかりに事件解決に意気込む押井の姿を描いたミステリー小説。残念な押井の姿は、コメディ作品として楽しむこともできますよ。

著者
藤崎 翔
出版日
2016-10-05

本作は、2019年5月にNHKのBSプレミアムで全4回のテレビドラマが放送されています。キャストは主人公の押井をジャニーズ事務所の演技派俳優・風間俊介、押井の相棒である横出刑事をNHK連続テレビ小説『なつぞら』で注目を集めている犬飼貴丈が務めます。

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作品の魅力とは?

本作の魅力は、押井の華麗な推理によって、わずかな手がかりから事件が解決に導かれていくところでしょう。しかしそれで終わりではありません。無事に犯人が判明し、事件が解決するはずが……最後の最後に事態を覆す「何か」が起きてしまうところに、ただのミステリーでは終わらない面白さがあります。

読んでいて「そんなのアリ?」と思うような突飛などんでん返しから、「これは騙された!」と唸らされるものまで、大逆転のバリエーションはさまざま。予想のつかないラストに、ついついハマってしまうでしょう。

いつも真剣な姿勢で事件に挑み、推理を展開する押井。しかし、女性相手に緊張してしまったり、手柄を逃して思わず泣き出してしまうなど、コミカルな面もあり、読者を飽きさせることがありません。

情けないところを見せながらも、めげずに次の事件に挑んでいく彼の姿を、ついつい見守りたくなってしまうことでしょう。

『おしい刑事』の見所エピソードをネタバレ!1:おしい刑事参上

事件が起こったのは、地元の大地主・久松家の豪邸。その豪邸で火事が起き、久松家の三男・佑三が亡くなりました。

火事の原因は、佑三が火吹きパフォーマンスの練習中に失敗したと警察側が推測。しかし調査を進めると、久松家の家計が苦しくなっていたこと、遺産相続について不満があることなど、家庭の不和が判明していきます。また、防音設備が整っているはずの部屋から聞こえたという佑三の声や、設置していないはずの火災報知機の音など、多くの不自然な点が次々と明らかに。

押井は、この火事が放火による殺人だと推測します。火事が起きたとき、屋敷にいたのは久松家の家族と使用人、そして父の友人である野木民夫という男……この中に犯人がいるはず。

捜査を続け、久松家に観葉植物を届けていた園芸店に辿り着きます。そして、店員への聞き込みで、犯人を確信するに至る情報を掴むのですが……。

このエピソードでは、屋敷内の観葉植物や、駐輪場の敷石についた傷痕などに着目しながら捜査を進める押井の姿が描かれています。一つ一つの手がかりを繋げていく押井の推理は、まるでパズルのピースがはまっていくようなワクワクを感じられるでしょう。

しかし犯人だと思われる人物は、実は全ての前提を覆してしまう意外な特技を隠していたのです。

押井の優れた推理力が伺えるだけに、予想外の事実が発覚する終盤では『おしい刑事』の意味を噛みしめてしまう第一話です。

『おしい刑事』の見所エピソードをネタバレ!2:おしい刑事の雪冤

住宅街の公園で起こった殺人事件。凶器のレンガに残された指紋から、容疑者として名前が挙がったのは不良少年の韮沢でした。しかし防犯カメラの情報から彼の犯行は不自然だと気付いた押井は、犯人は別にいると睨みます。

「韮沢がまったくの無実であると証明できたら捜査一課に異動」という上司との約束を受け、押井は張り切って捜査に繰り出します。聞き込み調査を進めていくと、被害者は金銭トラブルや、近隣住民とのいさかいがあったことが判明していきます。 

聞き込みの内容を基に推理していく押井は、公園のトイレに残された下足痕を決め手に、ついに真犯人を突きとめるのですが……。

聞き込みや鑑識結果の情報のみならず、あらゆるところから調査のヒントを見つける押井の観察眼が光るエピソード。一見すると1人分の足跡が、実は2人分のものであると見破り、犯人特定に至る説明は爽快さを感じながら読むことができるでしょう。

落ち着いた様子で犯人を問い詰める押井の姿からは、絶対に犯人を捕まえるという気迫が滲み出ています。他の事件とはひと味違った凛々しさが感じられるのも、このエピソードの特徴です。 
 

ついに真犯人を明らかにした押井は、念願の捜査一課に異動できると思いきや……惜しい真相については、ぜひご自身の目でお確かめください。

『おしい刑事』の見所エピソードをネタバレ!3:安楽椅子おしい刑事

久しぶりに実家に帰った押井は、年の離れたきょうだいの千春から、通っている高校で起こった事件について相談されます。現場を目にすることなく、聞いた情報だけで犯人を突き止める、安楽椅子探偵さながらの推理が展開されるエピソードです。

被害者は国語教師で理事長の息子でもある橋本。部室棟から投げ落とされたコンクリート片で怪我をしてしまいます。近くに居合わせた野球部員とともに、犯人がいると思わしき新体操部の部室を見に行くも、そこには誰もいませんでした。

千春の話を聞いていくと、橋本は容姿端麗で一部の女子には人気。一方で、贔屓が激しいことで多くの生徒から恨みまれていることが分かります。押井は運動部の生徒たちが協力して起こした事件と推理しますが、千春には「ありえない」と否定されてしまい……。

このエピソードは、事件についてすべて千春による話し言葉で説明されています。途中で関係ない話が挟まることもしばしば。千春が被害者や関係者に取材して聞いたという情報から、犯人を割り出していくことに。

もっともらしい推理を披露する押井ですが、今回はほとんど外してしまいます。実は、「千春の説明」に一種の叙述トリックが隠されています。事実が明らかになるとき、自分が無意識にとらわれていた先入観に気づかされることでしょう。

この文章の中に隠された不自然さに気づけたあなたは、謎を解けるかもしれません。

『おしい刑事』の見所エピソードをネタバレ!4:おしい刑事よ永遠に

シニア向けのマンションで、増岡則夫という男性が首を吊って亡くなっていました。自殺と思われましたが、増岡の妻・照子は過去にも夫を首吊りで亡くしていることが明らかに。二つの首吊り事件が酷似していることから、警察は保険金目当ての殺人事件でないかと疑います。

実はこの増岡夫婦、押井とは見知った仲でした。行きつけの居酒屋で度々顔を合わせ、仲睦まじい2人の姿を見ていた押井は、照子が殺人を犯したとは信じられません。真相を探るため、マンションの住人たちに聞き込みを開始します。

事件当時、何者かの足音が聞こえたという証言から、照子以外の人物が則夫を殺害した可能性を考え始める押井。証言の分析だけでなく、部屋の様子などからも住人たちの為人を推測していきます。マンション内に残された痕跡も調べあげ、ついに辿り着いた犯人とは……。

著者
藤崎 翔
出版日
2016-10-05

増岡夫婦のラブラブな様子は、これまで何度か登場しているため、このエピソードの結末は人間の意外なギャップにショックを受けるかもしれません。

押井が推理を説明しながら犯人に詰め寄るシーンは、普段のコメディタッチな雰囲気とは異なり、緊張感に満ちています。 犯人が自供し始めたと思いきや、犯行は一人によるものではなく、ある人物が共犯していたことが分かり押井は命の危機に追いやられます。

絶体絶命のピンチ、彼は助かるのでしょうか。ぜひ結末は、作品で確認してみてください。

最後の最後まで何が起こるか分からない、目が離せない事件ばかり。押井が「惜しい刑事」を卒業し、報われる日は来るのでしょうか?

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