漫画『セトウツミ』の面白さを、登場人物とストーリーからネタバレ紹介!

更新:2021.11.9

「別冊少年チャンピオン」で連載中の此元和津也による学園漫画『セトウツミ』。男子高校生の日常の、とても小さな1コマを切り取って展開するという異色の作品の魅力をご紹介します。

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漫画『セトウツミ』の見所を最終回までネタバレ紹介!個性溢れるキャラの魅力も!

著者
此元 和津也
出版日
2013-12-06

学生時代には、友人と遊んだり、塾通いをしたりなど人それぞれの過ごし方がありますよね。

『セトウツミ』では、そんなさまざまな経験をする学生時代に焦点をあてながら、舞台は「放課後」の「川べり」で、主人公の「2人の男子高校生」が「ずーっとしゃべっている」という、ただそれだけなのです。

それだけなのに、その面白さといったら他の追随を許さないほど!話題のくだらなさといい、会話のテンポといい秀逸で、読みながらつい爆笑してしまいますよ。

そしてそんな日常ギャグ漫画かと思いきや、最終回はまさかの展開。油断していた分、涙腺崩壊してしまう可能性もあるのでお気をつけください。

この記事では、2016年に池松壮亮×菅田将暉で映画化され、2017年10月から高杉真宙×葉山奨之でドラマ化された人気漫画『セトウツミ』の登場人物とストーリーの詳しい魅力に迫っていきます!

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漫画『セトウツミ』が単純なようで、深い【あらすじ】

漫画『セトウツミ』が単純なようで、深い【あらすじ】
出典:『セトウツミ』6巻

『セトウツミ』は、塾が始まるまでの時間を川べりで過ごす内海と、部活を辞めて暇な時間をもてあます瀬戸という2人の男子高校生がただずっとしゃべっている様子が描かれる漫画です。
 

関西を舞台にしている本作のタイトルは、瀬戸と内海が登場するから『セトウツミ』、というなんともベタなもの。

全編にわたって、高校生らしいベタでくだらない日常会話が、テンポのいい関西弁で交わされます。それが面白くて、何度も読み返してしまうのです。

また、2人のキャラクターも抜群に立っていて、読み進めるほどにどんどん愛着が湧いてきます。「実際に存在しているんじゃないか?」と思わせるリアリティがあるのです。

最初は互いに何も知らなかった2人が、会話をしながら徐々にお互いを知っていったり、あの頃は良かったと回顧してみたり、世の無常や人間の心の機微などを彼らなりに解釈してみたりと、単純なストーリーに思えて深いやり取りも見どころですよ。

登場人物1:ボケ担当。ちょっぴりおバカな瀬戸小吉

登場人物1:ボケ担当。ちょっぴりおバカな瀬戸小吉
出典:『セトウツミ』1巻

『セトウツミ』、1人目の主人公の瀬戸小吉は、元サッカー部でツンツンしたヘアスタイルがトレードマーク。

実家は「セトサイクル」という自転車を営んでいるのですが、その内情が実は複雑です。基本的に貧乏な瀬戸家は、アル中でギャンブル依存症の父、専業主婦の母、入院しっぱなしで退院の目処が立たない祖母と、祖母を探して徘徊する祖父で構成されています。

しかも両親の間で離婚問題が勃発中と、まさに絵に描いたような複雑な家庭環境です。
 

さらに、元々いたサッカー部で実力を発揮していましたが、先輩を出し抜いてフリーキックをしたことがきっかけで退部させられるという不遇も味わっています。

しかし、複雑な家庭環境や不遇な境遇ももろともせず、陽気で天然、ちょっぴりおバカなのが瀬戸小吉の良さなのです。

彼はある日突然、内海が時間をつぶしている川べりにやってきて、「家に小バエが出る」という極めてプライベートな話を持ちかけるというファンキーな一面を持っています。まったく初対面の内海にそんな話を持ちかけるとは、心臓に毛が生えたような強者です。

複雑な家庭環境で育ちながらも、どこかクスリとしてしまうような一面があり、それでも片思いしている樫村さんにはなかなかメールを送れないといった年相応の繊細でうぶな一面もありと、愛さずにはいられない人物です。

『セトウツミ』のドラマ作品では、葉山奨之が演じます。

登場人物2:ツッコミ担当。クールなミステリアスボーイ、内海想

登場人物2:ツッコミ担当。クールなミステリアスボーイ、内海想
出典:『セトウツミ』1巻

 

成績優秀で常にクールな眼鏡くん、内海想は特定の友人も作らず部活動もせず、学校と塾との往復で日々を過ごします。

あけすけな瀬戸とは違い、ふたりで会話をしていても、なかなか自分のプライベートをネタにしません。特に家族の話をすることを極端に嫌い、ほとんど話題にしませんが、「どうして勉強ばかりするのか」と問われた時には「そうしないと愛されなかったから」と答え、こちらも複雑な家庭環境を覗かせました。

一見何を考えているのか分からないミステリアスで、大人びた雰囲気をまとっていますが、瀬戸と話しているときの内海は年相応の普通の男の子。
 

また、絵が上手く「せと」という字が人を殴っているように見えるという話題になったときには、その画力をいかんなく発揮するなど意外な才能を持っています。
 

普段はクールで無表情ですが、表情を崩して笑ったり、しょっぱい顔をしたり色々な表情を見せる瞬間がたまらなくいとおしく感じられる人物が内海です。

『セトウツミ』のドラマ作品では、高杉真宙が演じます。


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登場人物3:あざと可愛いヒロイン!樫村一期

登場人物3:あざと可愛いヒロイン!樫村一期
出典:『セトウツミ』1巻

寺の娘で、あざと可愛い女子高生、樫村一期(かしむらいちご)は本作のヒロインのひとりであり瀬戸に想いを寄せられながらも内海に恋心を抱いている少女です。

友人として内海と付き合いはあるものの、内海からは何とも思われていないという報われない子なのですが、いつも明るく前向きで、少しあざといところがたまらなく可愛いのです。

一期が話しかけても瀬戸の話ばかりする内海に、瀬戸っぽい感じで「優雅な3文字しりとりグランプリをしよう」と持ち掛けたのはいいものの、「みやび」というメールを既読スルーされる彼女。一生懸命なのにこの報われなさには、つい頭をなでてあげたくなるような女の子です。

それでも、めげずに一途に内海を想う一期はとっても女の子らしく、瀬戸に向けるツンツンした姿とのギャップも魅力的。一途に内海を想う恋の行く末に注目したい人物です。

漫画『セトウツミ』のここが面白い!男子高校生のアホな会話だけなのに……

漫画『セトウツミ』のここが面白い!男子高校生のアホな会話だけなのに……
出典:『セトウツミ』1巻

瀬戸と内海の会話の何が面白いのかというと、会話の端々に放り込まれる小ネタであり、軽妙なテンポであり、独特の「間」です。
 

まさにコントのような瀬戸と内海の会話ですが、ネタ合わせをしているわけでもないのに会話が弾むというのは、よほど気が合うということでしょうね。
 

瀬戸が片思いする樫村さんの話題での2人の会話も秀逸です。

「彼氏おるんかな」
「どうやろ」
「訊いてきてくれへん?」
「嫌やそんなん」
「頼むわバナナあげるから」
「なんでバナナでいける思たん?」(『セトウツミ』1巻より引用)

「本当になんでいけると思ったの?」とこちらもツッコミたくなるアホさ加減。ポンポン進んでいくこのテンポとゆる〜い雰囲気にハマってしまうのです。

しかも、「相手を笑わせよう」という思惑がなく、本人たちは普通に話をしているだけなので、いたって真面目な表情。そこがまた面白いのです。

特に壮大な目標があるわけでもなく、目指すべき場所があるわけでもなく、なりたい何かがあるわけでもない、ただその日あったことや疑問に思ったことやどうでもいいことをしゃべっているだけなのに面白い。それが『セトウツミ』の魅力なのです。
 

漫画『セトウツミ』のここが面白い!主要人物以外もキャラ立ちがすごい

漫画『セトウツミ』のここが面白い!主要人物以外もキャラ立ちがすごい
出典:『セトウツミ』4巻

『セトウツミ』の魅力の一つは、瀬戸と内海のほかにも、個性豊かな脇役たちがたくさん登場することでしょう。

たとえば、生物の木沢先生は顔がゴリラにそっくりです。それだけでも面白いのに、授業の中で「我々人類はゴリラとの共通点はたくさんあって」という説明を「我々ゴリラは」とか口を滑らせてしまって内海にネタにされる始末。

さらに大道芸人のバルーンさんは外国人なのに流暢な関西弁でしゃべり、さらに瀬戸びいきで内海へのアタリがきついなど、キャラが立ちすぎの注目株ばかりです。

なかでもイチオシなのが、ある日突然瀬戸に告白してきた後輩の女の子、ハツ美です。

もじもじしながら近づいてきたと思ったら、ラブレターならぬ「ラブメモ」に「瀬戸が好き」と書いて渡すとか、後輩なのに呼び捨てとか、行動が個性に満ちあふれています。

内海を介してしか瀬戸と話ができなかったり、樫村さんの前で本人のあざとさを指摘したりと、瀬戸と対するときとは別人のようにまっすぐな彼女。しかし瀬戸以外の人間には饒舌で毒舌というキツすぎるギャップもあり、本当にスパイスが効いています。

恋する女子にありがちな、乙女な一面も持ち合わせつつ、個性的すぎるハツ美は魅力がいっぱい。ぜひ彼女にも、さらにその恋の行方にも注目してみてください。

漫画『セトウツミ』のここが面白い!まさかの伏線回収、感動の最終回!

本作をただのギャグ漫画だと思っているならば、それはかなりもったいない。ぜひ最終回まで読んでいただけないでしょうか。

実は『セトウツミ』はファンの期待をいい意味で裏切った感動の結末で心を打つ作品でもあるのです。

7巻まではいつも通りにくだらない会話、無駄な時間が続くのですが、この時間を最も無駄だと思っていたのは実は内海だったということが8巻の終盤で判明するのです。

著者
此元和津也
出版日
2017-12-08

実は彼はある計画のために瀬戸との会話をし続けていました。その計画は誰にも明かさず、遂行したあとのことまで考えるという徹底ぶり。

その徹底ぶりは、彼のある特質にありました。その特質は実は作品の合間合間で出ていました。今まで一通りの習い事はしたということ、スラスラと古文が出てくること……。

そして内海の古文の才能を活かした瀬戸から樫村へのラブレターが物語の重要なキーとなって結末までを駆け抜けるのです。

重要な秘密が明かされた後の、エンドロールのような最終回もまた見事。チャット形式のふたりの会話とともに、河原でのシーンが映し出されるというものなのですが、最後までヒヤヒヤさせておいて、チャットと河原での出来事の内容がピタッと当てはまるのは、またしても唸らされる展開です。

ただのベシャリ漫画では終わらない、切なくも希望溢れる展開をぜひご自身の目でご確認ください。

友人とダラダラしゃべるだけ……。そんな日常すら愛おしいものに感じられる『セトウツミ』。思いっきり笑える漫画として、おしゃべり上手の参考書に、ぜひ手に取ってみて下さい。

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