稲盛和夫が思う人生の目的とは?『生き方』の続編『心。』を要約。

更新:2021.12.6

稲盛和夫のミリオンセラー『生き方』の続編である『心。』。普段、改めて考えることの少ない人間の「心」。 経営に限らず仕事に取り組むうえで、成果を出すため、物事をやり通すために、大切にすべき「心」のありようが書かれています。 本記事では、稲盛和夫が考える人生の目的、心を高める方法をわかりやすく説明していきます。

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『心。』を読んでほしい理由と、読者からの評価

著者である稲盛和夫は、心を高める方法に触れる中で

「人生においても仕事においてもすばらしい結果を生み出すためには、ものの考え方、心のあり方が決定的な役割を果たす」 
(稲盛和夫 OFFICIAL SITE 「愛と誠と調和の心をベースとする」https://www.kyocera.co.jp/inamori/philosophy/words02.htmlより引用)

 

と述べている通り、心の持ち方を大切にしていたことが伺えます。

「心に悪い(自分に悪い)」ことから少しずつ離れていくこと、心のあり方を見つめ直すことは、よりよい人生を送るための第1歩。日常生活にストレスを感じている人、仕事で思うような成果が発揮できずに悩んでいるという方におすすめしたい1冊です。

また、同著『生き方』を読んだことのある方は、著者の考えについて、さらに理解を深めることができます。

「経営のカリスマ」とも呼ばれる稲盛和夫の人生の集大成に触れることで、前向きに考え、謙虚な心を持って人と接する意識を持つことができるようになるはずです。

本書は、生きるための指針としても活用できるため、老若男女問わず幅広い層に支持されています。読者からは「周りの人に感謝したくなる」「どの世代の人でも心に響く内容」という声も上がっています。

 

著者
稲盛和夫
出版日
2019-06-20

著者:稲盛和夫とは

稲盛和夫は、1932年、鹿児島に生まれます。実家は印刷業を営んでおり、父・母とも休みなく働く家庭で育ちました。

ご存じの通り、稲盛は「京セラ」と「KDDI」という2つの世界的大企業を立ち上げ、JAL(日本航空)を「奇跡の再生」へと導くなど輝かしい功績を残しています。

そんな稲盛も、幼少期は泣き虫で甘えん坊だったようで、中学受験にも2度失敗しています。さらには大学受験も就職も思うようにいかなかった「落ちこぼれの1人」だったそうです。

彼が着手しているのは企業経営だけではありません。1984年には科学や文明の発展のために「稲盛財団」を設立し、財団の活動の1つである「京都賞」は、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰しています。経営だけでなく、社会貢献活動にも力を入れていたことがわかります。

数々の本を著しており、2015年8月末に、世界での著書の累計発行部数は1000万部を突破しました。 このうち半数近い約490万部が日本で発行されており、残りの海外での発行分の9割以上は中国が占めています。 

著者が「心」を意識するようになったきっかけは、少年期にありました。結核の初期の病にかかった折に、隣人から勧められ谷口雅春の『生命の實相』という本を手にします。この本を通して「心のあり方が現象として現れる」という今に続く信念を持つに至ったのです。

人生の目的①心を高める

人生の目的の1つは「心を高めること」だといいます。 別の言葉で、魂を磨くとも表現しています。

たとえば、子どもは好奇心旺盛ですが、人をいじめたり、動物に対してひどい扱いをすることがあります。 これらは「心」が育ってないために起こるのです。

「純粋で美しい心をもって行動するなら、何事もなんとかなる。 常に心を磨き、高めていけば、どんな困難に陥っても、運命は味方してくれる。」 

このような信念を著者は長く抱いており、人生の助けとなってきたそうです。数々の素晴らしい実績は、「正しく生きる心」を大切にしてきた結果だといえます。

著者によると、純粋で美しい心を持つ方法は、目の前のやるべき仕事に全精力をかけて没入することだそうです。

人生の目的② 「善なる動機」を持ち続ける

著者は「動機が善であり、実行過程が善であれば、結果は問う必要はない、必ず成功する」と信じています。

人として正しいかという「良心に恥じることのない選択」をして、世のため人のために行動を続ける。そう心がけることで「天からの報い」により困難を乗り越えられる時がやってきます。 

これは企業活動においても同じことがいえます。正々堂々と人間として正しい方法を貫き、一生懸命にやるべきことをやっていれば、未来は開けてくる。

著者は実体験として、「京セラ」や「KDDI」の経営の中、日々懸命に働いているうちに、次に打つべき手は自ずから見えてきたし、そうすることで素晴らしい成果を手に入れることができたと語ります。 

心を高めるためのアプローチその1:いかなるときでも感謝の心をもつ

人生、いいことがあれば、時には苦難も待っているもの。そんな中で大事なことは、どんな状況であっても全てに感謝することです。

誰しもうまくいっているときは感謝すること忘れてしまいがちですが、失って初めて当たり前ではないことに気がつくものです。何ひとつ不便のない日常生活を送れていることに、まずは感謝する必要があります。

また、不幸や困難に直面しているときこそ、さらに感謝をする「絶好の機会」だと著者はいいます。 災難に遭ったということは「業」が消えたということであり、業がなくなったことを喜ぶべきだそうです。

感謝の心とは、相手に対してありがたいという気持ちがないと表れません。 現在の自分は、支えてくれた人たちのおかげで存在していると思い、いかなるときでも感謝の心をもって相手と接し、「ありがとう」といえる心の準備をしておくことが大切です。

著者は、どんなに小さいことでも感謝を忘れずに、うまくいかないことに対処してきたことで、人生を好転できたと語っています。

心を高めるためのアプローチその2:自分のためではなく、他者への思いやり

ビジネスにおいて、自分の利益だけを気にして、商品を高値で売りつけたり、サービスの質を落とすような自己中心的な会社からは次々とお客さんが離れてしまいます。

人間の心には「自分だけよければそれでよい」と考える利己の心と、「自分を犠牲にしてでも他人を助けよう」とする利他の心があります。

 利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので、誰からも助けてもらえません。自分中心であるため視野も狭くなり、間違った判断へと繋がってしまいます。 

 

 

一方、利他の心で判断すると、他の人のためという心であるから、まわりの人達が協力してくれます。視野が広くなるので、正しい判断へと繋がるのです。 

このように、よりよい仕事をするためには、自分のことだけを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他」の心に立って判断をすべきです。 

「利他の心で、ものごとに取りかかること。 自分の才能や能力も与えられたものであり、それを使って社会に還元する。」 
 

このような心構えで著者は、「日常の仕事にあたって、自分さえよければという利己心を抑え、人間として正しいか、動機に「私心」がないかと、常に自問自答しながらものごとを判断していきました。 また、「世のため人のために行動すれば、心が磨かれることにもつながる。」と語っています。著者の成功は、利他の心あってのものなのです。

 

 

 

『心。』の関連おすすめ本①

誠実に、実直に、人のために働くという考えの「稲盛哲学」を、マンガ、イラストを使って、子どもでも理解できるような内容になっています。

著者
稲盛和夫
出版日

思いやりの心を持つこと、ど真剣に生きる、思いがもたらす力など、稲盛哲学のエッセンスが満載で、子供でも楽しく読み進められるようになっています。

4章では、どうして大人は「はたらく」のかというテーマで、仕事の仕組みについても考察しています。

子どもでも読める内容となっていますが、大人が読んでも多くの学びがあります。稲盛氏の書籍に触れたことのない方は、この漫画から始めてみるのもよいと思います。

『心。』の関連おすすめ本②

人生・仕事の成果をもたらす「能力」「熱意」「考え方」の3つの要素のうち、一番重要な『考え方』を中心に書かれています。

稲盛和夫の考えをもっと知りたいという方は、この『考え方~人生・仕事の結果が変わる』がおすすめです。

著者
稲盛 和夫
出版日
2017-03-23

「大きな志を持つこと」、「常に前向きであること」、「努力を惜しまないこと」などそれぞれが独立した9章のテーマから構成されています。

「人生は考え方によって形づくられる」という部分では、人生に幸福をもたらす「人間のあり方」を語っています。

『心。』の関連おすすめ本③

稲盛和夫にとっての「働く」とはどういうことか気になる方はこちら。

「なぜ働くのか」「いかに働くのか」といった内容から労働が人生にもたらす、素晴らしい可能性を教えてくれます。

著者
稲盛和夫
出版日
2009-04-02

「平凡な人」を「非凡な人」に変える方法や、人生において価値あるものを手に入れる術も説明しています。

全ての働く人がこの本を通して「働くこと」の意義を深めることができる内容となっています。

いかがだったでしょうか。今回は稲盛和夫が思う人生の目的、心を高めるため方法についてお伝えしました。 
最後に著者が考える「この世を動かす絶対法則」を紹介します。 
それは、「人生で起こってくるあらゆる出来事は自らの心が引き寄せたものである。」ということです。この本を手に取っていただいて「どういう心で生きるか、心に何を抱くか」について考え、自分の姿勢を見直すきっかけとなれば嬉しく思います。

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